【活動報告】令和4年度 専門職対象「成年後見制度勉強会」開催しました。
掲載日:2023.04.20
令和5年3月10日(金)18時30分から、専門職対象の『成年後見制度勉強会』を開催しました。
「事例検討から意思決定支援を考えてみよう」をテーマに、厚生労働省の意思決定支援ガイドラインのモデル研修づくりに携わられた一般社団法人日本意思決定支援ネットワーク代表名川 勝様、本間奈美様を迎え、意思決定支援ガイドラインのポイントと実施のためのノウハウを提供いただき、事例検討から意思決定支援の理解を深めることを目的に開催しました。当日は、3部構成で行われ、1時間45分の長い研修にも関わらす法律職、福祉職、施設関係者など62名の方が市内・外からご参加いただきました。
【研修会の内容】
《第1部》基調講演「意思決定支援ガイドラインの重要ポイント、第二期成年後見制度利用促進計画について」
《第2部》事例検討「事例検討から意思決定支援を考えてみよう」
《第3部》意思決定支援ツール「トーキングマットの効果的な使い方の紹介」
参加者のご意見・ご感想の一部をご紹介します!
*各種ガイドラインの違い、ポイントについて説明が良かった。「あなたのことをもっと知りたい」が重要だが、支援の中でそれを忘れがちになる。(社会福祉士)
*本人の事を知らなくても支援はできる、と思ったことがなかったので驚きました。「真面目に取り組むほど分からなくなる」というのは共感でした。主役は利用者、意思を尊重しつつ調整していくには、やはり関係性だと感じた。(施設職員)
*本人と家族の意見、利益が相反することは現場にいるとよくあること。その中で、本人がなぜそれを叶えたいのか、その際のリスクは何か、リスクを減らす方法はあるか、家族はリスクを許容できるかなど、本人や家族、関係者が関わって考えをまとめていく必要があると思った。(地域包括)
*最善の利益とは?改めて考えさせられた。(介護支援専門員)
*意思決定支援に活用できるツールがあることを知った。笑顔の増える取り組みで素晴らしい、使ってみたいと思った。(障がい関係者)
*次年度も研修があるとのことなので、もう少し掘り下げてみたいです。名川先生に質問です・・・自身の勉強不足で恐縮ですが、なぜイギリスでの意思決定支援を参考にしたり、日本に取り入れ、紹介しているのか理由があれば教えていただきたいです。(福祉職)
《名川 勝 先生からの回答です》
ご質問ありがとうございます。
このあたりは時間があれば説明することもあり、授業などでは言及しています。
英国法は Mental Capacity Act 2005(MCA2005)という法律のことで、日本では英国意思決定(支援)法、英国意思能力法、ほか幾つかの言い方があります。2005年に制定され、2007年に施行されました。10年以上経過しています。
この法律は、それまでの成年後見の仕組みから踏み出し、先日紹介した「支援つき意思決定(supported decision-making)の考え方や仕組みを法律としていち早く定めたことでも知られており、日本で参照しやすい資料のひとつであるといえます。ただし英国だけが傑出して先んじたという話ではありません。当時は欧州評議会という欧州各国の重要な会議体などでも成年後見制度など代理制度の見直し議論が進められていました。英国法はこれを具体化したものと考えることも出来るように思います。現在では他国でも幾つか参照できる法律があります。
また英国法は意思能力とその支援に関する原則(5原則)を定めており、これがよく知られています。日本の「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」はこの5原則の影響を強く受けていると言えます。
もうひとつ興味深いのは、この法律が意思決定支援に関する広い領域をカバーしている点です。日本の後見制度との比較でいうと、英国法は法定後見制度と任意後見制度を含み、さらに様々な場面での意思決定支援全般について範囲としています。
他にも、介護者等の免責について触れたり、また日本でいう任意後見やセーフガード、独立アドボケイトについて定めるなど、興味深い特徴を持っています。
以上のような特徴から、講義や講演では、国連障害者権利条約とともに、英国法を最初に紹介することが多くなっています。(時間があれば、他に豪州の制度や韓国、あるいは南米の新しい法律などにも触れたいところですが、割愛します)